ついうっかりして包丁で指を切ってしまった経験は多くの人があるのではないでしょうか。
家庭で使う刃物では包丁とハサミが一般的ですが、ハサミは構造上あまり指を切ってしまうことはありません。
しかし、包丁は使い方を間違えると指を切ってしまうことがあるので、処置が必要になります。
包丁で指を切ってしまった場合には、どのように対応すればよいのか、について説明します。
指を包丁で切りづらい使い方は?
包丁で指を切ってしまった時には、指を切ってしまう理由があります。一番考えられるのは間違った包丁の使い方をしていることです。
包丁を正しく使うためには、実は立ち方がとても重要です。食材を包丁で切るのに立ち方が重要なんて、信じられないかもしれませんが、本当なのです。
よくある間違いは、まな板に対して水平に(平行に)立ってしまうことです。まな板に対して平行に立ってしまうと、包丁は左側に傾いてしまいます。
これを直そうとしても、自分自身の体が邪魔になって、包丁が動かしにくくなってしまします。
したがって、包丁に対して(右利きであれば)右足を少し引いて左半身に立つと包丁遣いがスムーズになるでしょう。包丁とまな板が垂直に交わる角度になることが理想です。
また、まな板の高さも重要です。高過ぎても低過ぎても、包丁を使う人が疲れてしまいます。
自分にとって適切な高さに調整することで、腰痛なども防ぐことができます。調理台を動かすことは難しいかもしれないので、まな板を重ねるなどの工夫をしてはいかがでしょうか。
次に包丁の持ち方です。固いものを切る時と細かい作業をする時には持ち方が異なります。
まずは基本の「握り」の持ち方ですが、金づちを持つときと同じように包丁の柄をしっかり握る持ち方です。
肉も魚も野菜も切ることができる万能な包丁の持ち方です。次に硬いものを切るのに適している「押さえ」という持ち方です。
押さえは、包丁の刃の表裏(両側)を親指と人差し指で挟む方法です。包丁の刃が安定するので千切りなどにも適している握り方です。
次に細かい作業に適している「指さし」という包丁の持ち方です。
指差しとは包丁の刃の背の部分に人差し指を乗せて、他の指で柄をしっかりと持つ、指差しをしているように見える持ち方です。
刃先をコントロールしやすいので、刺身を切ったりするのに適しています。右手の包丁の持ち方だけではなく、食材を抑える左手の使い方も重要です。
実は、包丁で指を怪我してしまうのは、左手が多いのではないでしょうか。左手で食材を持って(押さえて)いるときに、右手の包丁で指を傷付けてしまうのでしょう。
基本的に左手は丸めておくことが基本です。これを「猫の手」と言います。
指を広げておくと包丁の刃が当たった時に、指が切れやすくなってしまいます。したがって、指を広げた状態で食材を抑えるような行為は止めましょう。
猫の手の状態で食材を抑えて、刃が指に直接当たらないようにして、刃先ではなく刃の中央部分が指の第二間接に当たるように動かせば指を切るようなことはなくなります。
刃先は少し外側に向けておくとよいでしょう。正しい姿勢、正しい包丁の持ち方、正しい包丁と指の使い方を身に付ければ、指を切ることはほとんどなくなるのではないでしょうか。
指を切ってしまった時の処置方法は?
それでも万が一包丁で指を切ってしまった場合にはどのように処置をすればよいのでしょうか。
傷の深さや出血量によって対応方法は異なりますが、一般的な出血の場合であれば自宅で処置することが可能です。
最初に出血箇所を水でよく洗ってください。水道の水などで雑菌を洗い流すことが重要になります。
最初から消毒液を使ってしまうと、雑菌の侵入を防いでくれる白血球の活動を阻害してしまうので、初めは水だけで洗うようにしましょう。
次に切った場所が心臓よりも高い位置になるようにします。そこで強く切った場所を圧迫します。
出血を止めるために輪ゴムなどで指をきつく指を縛ったり、包帯などできつく縛ったりする人もいますが、かえって逆効果になる場合があります。
確かに縛っている状態の時は出血が少なくなっているような気がしますが、輪ゴムや包帯を外したときに大量に出血してしまう可能性があるのです。
血液の循環で重力に逆らうようにすると、血の流れは少し弱くなります。そして、圧迫することで出血量は減るのです。
出血が止まったら、乾かした方が早く傷が治ると思っている人は多いのではないでしょうか。実は、それは間違いなのです。
傷を早く治すには適度な湿り気が必要です。細胞が復活するためには湿潤環境が必須なのです。
治りかけの傷にガーゼを当てていることがありますが、あれは復活しようとしている細胞ごとガーゼに吸収されてしまうので、かえって治りが遅くなってしまいます。
なかなか出血が止まらなかったり、傷が深くて骨が見えているような場合は、病院で治療してもらうことが必要です。
包丁で切ったくらいで病院なんて恥ずかして行けない、と思う人があるかもしれませんが、自分では処置が難しい状態であれば、急いで病院に行くことが重要です。
病院であれば、傷の状態に合わせて適切な処置をしてくれるでしょう。
病院は何科へいく?
包丁で指を切ってしまった場合には何科を受診すればよいのでしょうか。夕飯の準備をしている時などに指を切ってしまったのであれば、時間外診療で救急外来に行けば問題はありません。
しかし、通常の病院の営業時間であれば、整形外科が一番適していると考えられます。手足の怪我であれば、整形外科が好ましいでしょう。
皮膚を深く切ってしまって皮膚の再生をお願いしたような場合は、形成外科や皮膚科の方が適しているかもしれません。
基本的には、外科や皮膚科でも包丁で指を切った場合には対応はしてくれますが、前述したような大きなケガの場合は整形外科に行ってみましょう。
現在では、大きな病院はいくつもの専門の科に分かれており、素人にはどのような違いがあるかわかりにくいし、適切な専門科がどの科なのかを判断することはかなり難しくなっています。
その場合には、病院の受付に自分の症状を話して、相談してみても良いでしょう。また、病院によっては患者さんのために医療コンシェルジュを配置しているところもあります。
医療コンシェルジュとは、患者さんが病院で迷わないように、適切な専門科を案内したり、検査室や会計への誘導をしたり、患者さんのための総合サービスを提供する人のことです。
場合によっては、包丁で指を切って病院に行く必要があるかどうかを、電話で相談に乗ってくれることもあり得るでしょう。
本当に緊急の場合であれば救急外来に行くことは問題はないのですが、どの科に行けばよいのかわからないので、とりあえず救急外来を使うようなことは止めましょう。
本当に緊急事態に遭遇している人が救急病室や施設を使えなくなる場合があるので、正しい科を選択することが大切です。
病院の受付もコンシェルジュもいなくて、どの科を受診してよいのかわからない場合は、とりあえず外科か皮膚科に行くとよいでしょう。
包丁による指の切り傷であれば、どちらかで基本的な処置をすることは可能だからです。
もし、外科や皮膚科で手に負えないような状態であれば、病院の方で適切な専門科へ回してくれます。
繰り返しになりますが、包丁で指を切った、ということを軽く考えてはいけません。
ましてや小さな子供の場合には、指を切り落としてしまうような重大な事故になってしまう可能性もあります。
適切な専門科にかかるように、普段行っている病院の専門科を確認しておくことも重要かもしれません。