お盆になるとご先祖様の霊を自宅に迎えるために迎え火を灯す地域は多いのではないでしょうか。日本の夏の風物詩として、情緒溢れる光景と言えます。迎え火や送り火は具体的にはいつ灯すものなのでしょうか。

2018年のお盆の日程に沿って具体的に説明します。また、迎え火や送り火を灯す時間帯や方法についても、解説します。さらに有名な日本の迎え火・送り火のイベントについても紹介します。


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お盆の迎え火の意味や由来は?いつ行う?

 

 

お盆には、あの世からご先祖様の霊が現世へ戻ってくるとされています。現在の暮らしに導いてくれたご先祖様に感謝の気持ちを込めて、ご先祖様を大切に敬う大切な行事がお盆です。

 

迎え火とは

 

ご先祖様が現世に戻る時に、道に迷わないように目印にするものが迎え火です。迎え火は、玄関先や門中で、お盆初日の午後から夕方にかけて火を焚きます。

ご先祖様の霊は、その煙に乗って家の中に導かれるとされています。一戸建では屋外で迎え火を焚くことに大きな問題はないかもしれませんが、マンションなどでは火の使用を禁じているところもあります。そのような場合にはどのようにして迎え火を灯せばよいのでしょうか。

火を焚くことが禁止されている場所では、盆提灯を利用してはいかがでしょうか。ろうそくではなく、電気や電池を使った提灯であれば、安全に迎え火の代わりにご先祖様の霊を迎えることができるでしょう。

 

送り火とは

 

お迎えしたご先祖様の霊はお盆が終わればあの世に帰らなければなりません。一緒にお盆を過ごしたご先祖様の霊が無事に帰れるように、迎え火と同じ場所で焚くお見送りの火のことを送り火と言います。

送り火を焚くときに、精霊馬(キュウリやナスで作った馬の形をしたお供え物)も一緒に燃やす地域は多いようです。ご先祖様の霊は、精霊馬を燃やした煙にまたがって、天に帰っていくと信じられています。
赤い提灯


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迎え火と送り火の焚き方

 

迎え火や送り火の焚き方には作法があります。地方によってはしきたりが異なる可能性がありますが、一般的に行われている方法を説明します。まず迎え火や送り火を焚くには焙烙とおがらが必要です。

焙烙とは素焼きの平皿のことで、ここにおがらを載せて火を焚きます。焙烙がない場合には、耐熱の平皿や灰皿で代用しましょう。おがらとは、皮をむいた麻の茎の部分を言います。おがらを燃やすことで、迎え火や送り火のための火を焚きます。

おがらを燃やすことには、清浄な植物と言われている麻を燃やすことにより、玄関先や門中などの場所を祓い清めるという効果があるとされています。

迎え火や送り火は、日本に古くからある風習なので、仏教であれ神道であれ、火を焚く習慣には変わりがありません。但し、浄土真宗にはご先祖様の霊を迎えるという慣習がないので、迎え火や送り火を焚くことがありません。

その代わりに、盆提灯を飾ってご先祖様に感謝の気持ちを伝えているようです。

 

 

どのようなやり方?日にちはまたぐ?

 

 

地域や信仰によってお盆の風習は異なっていますが、曹洞宗のお盆のやり方についても、例として紹介してみましょう。
お寺の庭

 

お盆の作法(曹洞宗の場合)

 

曹洞宗では、仏壇の外に盆棚を準備します。盆棚は、小さい机に白い布をかけたもので問題ありません。仏壇とは別に盆棚を祀るような場合には、位牌を盆棚に移動しておきます。盆棚の中央にはこもを敷いて、そこにお供えや精霊馬、そうめんなどを飾ります。

お供えに関しては、地域差がありますが、曹洞宗では、3食の食事だけでなく、10時と15時のおやつまで供えることが一般的です。地方によっては、3食の食事メニューまで決まっているところもあるようです。

ご先祖様をお迎えする側は大変ですが、お盆が済んだらお供え物を曹洞宗のお寺に納める習慣があるので、手を抜くことができないと言う檀家の人も多いようです。


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2018年のスケジュール

 

2018年のお盆のスケジュールについては、以下の通りで、日にちをまたぐことが一般的です。新暦に対応した新盆は東京近郊で実施されています。新盆の期間・期日は、7月13~15日で、迎え火は7月13日、送り火は7月16日です。

東北・中部・関西では新暦の月遅れ盆にあたる8月15日を取り込んだ月遅れ盆が一般的になっています。月遅れ新盆の期間・期日は、8月13~15日で、迎え火は8月13日、送り火は8月16日です。

沖縄・中国・四国・九州では旧暦のお盆である7月15日を守った旧盆が一般的です。旧盆の期間・期日は、8月23~25日で、迎え火は8月23日、送り火は8月26日です。このように日本には3種類のお盆があるのです。

 

 

2018年で有名な送り火イベントは?

 

 

お盆の迎え火や送り火は、地元の人だけでなく、多くの帰省客や観光客にとっても楽しみなイベントです。有名なイベントをいくつか紹介します。

 

京都五山送り火

 

京都五山送り火は日本で最も有名な送り火と言っても過言ではないでしょう。祇園祭とともに、京都の夏の風物詩となっており、毎年8月16日午後8時に五山で同時に点火されます。

五山とは、

 

東山如意ケ嶽の「大文字」、金閣寺大北山(大文字山)の「左大文字」、松ヶ崎西山(万灯籠山)・東山(大黒天山)の「妙法」、西賀茂船山の「船形」、及び嵯峨曼荼羅山の「鳥居形」 (引用:「京都五山送り火」京都市観光協会)

 

を指します。

京都五山送り火は、松明の火を空中に投げ上げ、天に帰るご先祖様の霊を見送るという習慣が元になっていると言われています。この松明の火が山に点火され、山に残ったものが京都五山送り火の始まりと考えられています。

しかし、京都五山送り火の正式な起源はわからない、というのが正しいようです。足利義政を創始者とするという説が有力なようですが、京都の民間人のパワーと風習が京都五山送り火のような盛大なイベントを生んだと考えられるのです。
紙灯篭


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平泉大文字送り火

 

平泉大文字送り火は、毎年8月16日に戦没者の追悼やご先祖様の御霊を供養するために、岩手県平泉町の束稲山で行われるイベントです。奥州藤原四代の栄華や源義経主従を偲ぶという意味合いもあるそうです。

京都の東山に模した束稲山では、約200mの大の文字が夜空に浮かびます。中尊寺の不滅の法燈の火をトーチに分けて、その火をリレーをしながら、束稲山駒形峰で大文字の送り火を行なっています。平泉に夏の終わりを告げる風物詩として有名です。

 

奈良大文字送り火

 

奈良大文字送り火は、毎年8月15日の午後8時に点火される、戦没者の慰霊と世界平和を祈念する火の祭典とされています。「大」の字に点火をする前の午後6時50分から催される、飛火野での慰霊祭は、奈良県の出身者29,243柱の英霊を供養するための儀式です。

慰霊祭では最初に春日大社の神官が神式で慰霊の儀式を行います。次いで、奈良市内の約30の寺院から集まった僧侶が、仏式の慰霊の儀式を行います。同じ祭壇・場所で、神式と仏式の儀式を行うことは珍しいことです。

神式・仏式と異なる様式でありながら同時に儀式を行うのは、世界平和のために宗教や宗派を超えて協力して祈る、という気持ちが込められているそうです。行事の目玉である大文字の送り火の「大」の字は宇宙を洗わしていると言われています。

「大」を形成するための火床は、人間の煩悩と同じ108個が使われています。また、 「大」の文字は、一画目が109m、二画目が164m、三画目が128m、と日本最大規模の大きさです。奈良公園はもちろん平城京跡などの奈良市内各所から楽しむことが可能です。

奈良大文字送り火は、昭和35年に戦没者のための行事として始まったのが最初です。観光客に向けた行事としては定着していますが、地元の人々の人気は今ひとつのようです。しかし、当日には東大寺で万灯供養会もありますので、相当の混雑が予想されます。