夏も間近のこの季節、日本には梅雨というジメジメした時期がやってきます。この時期は食べ物も痛みやすかったり、すぐにカビが生えたりという時期でもあります。

部屋の中にカビが生えてしまった、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に和室は家の奥まった場所に位置し、湿気がこもりやすくなっている家もあることでしょう。

そこで今回は畳のカビ取り方法をご紹介します。合わせて予防対策方法も紹介しますので、現在の住まいに和室がある方もない方も、ぜひ覚えていってください。


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身近なカビの種類

まず、カビというものがどんなものかご存じですか?カビは真菌類の一種で、ジメジメとした湿度の高い気候を好みます。現在までに約3万種が発見されており、今なお新種のカビ菌が発見されています。

ここではその3万種の中から身近な例を3種紹介します。

アオカビ

聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。ペニシリウム(Penicillium)と呼ばれるアオカビ族の総称で約150種類あります。繁殖すると多くが青緑色のコロニー(集落)を作るためこう呼ばれます。

主に食べ物や埃に生息し、畳に生えることもあります。病気を引き起こすものもあり、腎臓に影響する「シトリニン」を産生する種類があります。腎細尿管上皮変性という病気を引き起こす原因菌として知られています。

ですが、この中の種類には人間の生活に役立つものもいます。

身近なところで言うと、ゴルゴンゾーラやブルーチーズ、カマンベールチーズはアオカビの発酵によって作られています。表皮に生えたカビが酵素を出し、内側のタンパク質を分解することで独特の風味が出ます。

カマンベールチーズは白カビと思われがちですが、実はアオカビの仲間を使っています。カビ部分から抽出した酵母を使っていますので、そのまま食べてしまっても問題はありません。

また、「ペニシリン」という言葉を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。マンガやドラマで有名になりましたね。そうです、ペニシリンはアオカビから作られます。

 

 

1928年にイギリスのフレミング博士が発見したペニシリンは世界初の抗生物質として、世界中の傷病者を救いました。1942年に実用化され、第二次世界大戦の負傷者を感染症から救った、偉大なる発見です。

クロカビ

クロカビは特定の種類を表すのではなく、黒っぽく見えるカビの総称です。ここでは代表的なクラドスポリウム(Cladosporium)について説明します。

こちらはアオカビと異なり、菌糸自体が深緑色をしています。水に濡れることで黒く見えるため、風呂場に生えるクロカビは黒色をしています。壁のシミやアレルギーの原因菌となることが知られている、アオカビに並ぶ身近なカビです。

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コウジカビ

麹と聞くと日本では有用なものとしてのイメージが強いのではないでしょうか。アスペルギルス(Aspergillus)と呼ばれるカビの種類の1部は醤油や味噌の発酵に用いられます。

また、畳に生えやすいカビとしても有名です。もちろん人間にとって有用なだけでなく、外を与えることもあります。人体に入り、感染するとアスペルギルス症を起こし、主なものでは気管支炎などがあります。

身近なカビ菌ですので、ほとんどの人が毎日のように吸っています。ですが、普通は感染することがない日和見感染です。免疫が落ちた高齢者や病み上がりなどで感染するため、免疫低下が考えられる時は危険なカビ菌です。

 

 

畳にカビが生える原因とは?

 

 

では、なぜ畳にカビが生えるのでしょうか。まずは、カビが繁殖しやすい条件を提示します。

カビの繁殖条件
高湿度:40%で発生し始め、80%以上で爆発的に増加
適温:10℃~35℃特に20℃~30℃は最適栄養:埃などが栄養源酸素:空気に触れることでカビは増殖

ここで、日本の夏の和室条件を考えてみましょう。基本的に夏はジメジメとしていますよね。梅雨の時期を過ぎても台風や夕立など雨が降る機会は少なくありません。

また、畳というのは実は湿気を吸い取りやすいのです。畳が何でできているかご存じですか?畳は植物のい草を使って作られています。ですので、畳は呼吸をします。特に新しい畳ほど呼吸回数も多くなります。

その呼吸をする際に、空気中の余分な水分も吸い取ります。吸い取った水分は、冬場など乾燥する時期に吐き出し、部屋の湿度を一定に保つ、言わば天然の除湿・加湿器のようなものです。

ですが、そのために畳には多くの水分が含まれています。一説によると、畳1畳分で約500mℓの水分を吸収できるようです。つまりは多湿な環境を自分で賄っているということです。

 

 

温度も充分に条件を満たしています。特に畳の部屋が奥まった場所にあり少しひんやりとしていると、ちょうど最適温度になりがちです。

酸素はもちろんありますよね。和室を密閉空間にして、真空状態にしている人はまずいないでしょう。

残りは栄養ですが、きちんと畳の部屋まで掃除していますか?日常的に使わない部屋はどうしても後回しになりがちです。

この条件のうち、酸素は変えられません。温度も10℃以下にすることはほとんど不可能ですし、20℃以下であっても電気代などのコストを考えるとあまり理想的ではないですね。

 


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予防や対策・落とし方は?

 

 

カビが人体にとってあまり有益でないことはわかっていただけましたか?わかっていただけたら対策が必要です。できればカビが生える前に対策したいものですね。また、万が一生えてしまった時はどう処理すればよいのでしょうか。

カビの予防対策

まずは、カビが生える前に対策をとっておきましょう。カビの発生条件は既にお話しましたが、それを満たさないようにすることでカビの発生を抑えたり、増加を防ぐことができます。

まずは、こまめな掃除を行い、カビに与える栄養をなくすことが大切です。埃や木屑などは栄養素となりますので、必ず取り除きましょう。また、それらの栄養源をカットすることでダニなどの繁殖も抑えられます。

また、定期的にエタノールで除菌することで、カビの発生リスクを抑えることができます。

そしてなるべく湿度を低く保つことが大切です。少しばかりコストはかかりますが、除湿機などを設置し湿度を低く保つことでカビの増殖を抑えられます。

安くすませたい方は除湿剤を置いてもよいでしょう。オカモト株式会社が製造している「水取りぞうさん」などは安価で買えますし、タンクタイプとシートタイプの二種類があります。

部屋の隅にタンクタイプ、押し入れや、家具の隙間にシートタイプなど使い分けることで効率的に除湿することができます。

また、エアコンのドライモードなどで湿度を取るのもよいです。ですが、その場合エアコンにカビが生えることがありますので、こまめに掃除することが大切です。

簡単なお手入れは「NHK総合テレビ」の「ためしてガッテン」で紹介されていました。エアコンを使ったあとに、「送風モード」で1時間運転することで、エアコン内部の結露を乾燥させ、カビの増殖を抑えます。

 

 

そして、なんといっても換気をすることが1番よいです。襖などを開け放ち、自然の風を取り入れることで換気できます。もし外に面していない、雨が降っているなどの場合は扇風機などで風を送りましょう。

また、人が立ち入らない部屋はカビが生えたり傷んだりしやすくなります。ですので、1日に1度くらいはその部屋に入ることで空気も循環します。

もし、洗濯物を部屋干しするのであれば、和室を避けてください。洗濯物を干すとどうしても湿度が高くなってしまいます。どうしても部屋干しが必要なら、なるべく和室から離れた部屋ですることをおすすめします。

カビが生えてしまったら

カビが生えたら、なるべく早く掃除をすることが不可欠です。カビは菌ですので、放っておくとどんどん菌糸が伸び、根元から除去することが難しくなります。

まずは、除菌から始めます。カビ部分に消毒用エタノールをスプレーし、畳の中にある菌糸を除菌します。染み渡ったら歯ブラシなどを用い、カビを畳の表面から剥がします。剥がれたら掃除機で吸い取ります。

 


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掃除が終わったら、もう一度畳に消毒用エタノールを吹きかけます。最後に乾いた清潔な布で乾拭きし、掃除は完了です。

やってはいけないことは、いきなり乾拭きや水拭きをすることです。乾拭きをしてしまうと、カビを広げることになりますし、水拭きですと、カビに水分を与えることになります。

また、殺菌前に掃除機をかけると、カビの胞子が掃除機によってばら撒かれることになります。ですので、掃除機をかける際は必ず除菌してからにしましょう。

もしカビによるシミなどがあれば、漂白剤で対処することができます。希釈した漂白剤を用いますが、必ず目立たないところで試し、畳が色落ちしない濃度か確かめてください。

 

 

主婦の味方、重曹やお酢は?

 

 

最近ではお掃除アイテムとして使われることの多い重曹やお酢ですが、畳のカビに対してどのような効果を示すのでしょうか。

重曹水

重曹水は炭酸水素ナトリウムの水溶液で、非常に弱いですがアルカリ性の液体です。実は、これはあまり畳にとってはよくありません。畳はアルカリ性と結合することで変色してしまうのです。

また、重曹自体に静菌効果といって、繁殖を抑える力はあるものの殺菌効果があるほど強いアルカリ性ではありません。こういったことから、重曹水は畳の掃除に向いているとはいえません。

お酢

お酢は重曹と違い酸性を示す液体ですので、殺菌効果があり、エタノールの代わりに畳掃除に使うことができます。また、漂白効果も兼ねていますので、掃除ついでにシミもとることができます。

ですが、張り替えて半年程度までの畳ですと、変色させてしまう恐れがあります。また、殺菌効果はエタノール、漂白効果は漂白剤の方が勝りますので、代用品として使う程度がよいでしょう。

畳のカビ画像まとめ

では、最後に畳のカビ画像を紹介します。畳の除湿・除菌を心がけていつまでも綺麗な畳を使いたいものですね。

クロカビが目立つ

出典:長谷川畳店

カビによるシミ

出典:Yahoo!知恵袋