お盆の時期には海に行ってはいけない、と言う話を聞いたことはありませんか。お盆の頃に海に入ると、霊に足を引っ張られて海に引きずりこまれると言うのです。実際にお盆の時期には海の事故が多くなり、単なる迷信と片付けることはできないような気もします。

そこで、お盆の時期に海に入ってはいけないとされる言い伝えの内容を確認したうえで、お盆の頃の海水浴がダメな本当の理由を紹介します。

 


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お盆に海に入ってはダメだとされる言い伝え

 

 

お盆の時期には海に入ってはダメだと子どもの頃から、祖父母や両親に注意されていた人は結構いるのではないでしょうか。海が近い地域で生まれ育った人は、お盆の時期には霊に海に中に引き込まれるという怖い話を聞いたことがあると思われます。

お盆に海に入ってはいけない理由として、言い伝えられてきたものをいくつか紹介します。

 

先祖の霊が帰ってきている

 

お盆とは、毎年7月あるいは8月の13日~16日頃に行われる夏の御霊祭の行事です。あの世からご先祖様をお迎えして、その魂を供養する日本に根付いた習慣の一つです。地域によっては独自のしきたりがあるお盆もありますが、先祖を敬う気持ちは共通でしょう。

このようにお盆の時期には、多くのご先祖様の霊が帰ってきているとされています。この霊は海から帰り海へ戻っていくとされています。したがって、お盆の頃に海に近付くと、霊に取り付かれて、あの世に戻る時に道連れとして海に引きずり込まれると言うのです。

例えば、沖縄ではこのような言い伝えが今でも信じられていて、お盆の時期に海水浴をしようとすると、地元の人に怒られてしまうそうです。しかし、供養をしてもらって喜ぶはずのご先祖様の霊が、海に引きずり込むようなひどいことをすることには納得できません。

お盆の時期にお迎えもせず、お供え物も用意していないような子孫だったら、ご先祖様の霊が怒って、子孫を懲らしめるために海に引きずり込むようなこともあるかもしれませんが、お盆の時期に海に入ってはダメな本当の理由が隠されているような気がします。

子どもにとっては霊の話は怖いのでなかなか忘れることはできません。お盆の海での事故を避けるために、ご先祖様の霊を持ち出して、言い伝えとされたのかもしれません。
荒れる波

 


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海には霊が集まりやすい

 

もうひとつ、これはご先祖様の霊を悪者にする話ではないので、上記の話よりは納得できる言い伝えがあります。お盆の時期には、ご先祖様だけでなく、水難事故などで亡くなってしまった人の霊もあの世から戻ってきます。

不慮の事故でなくなってしまった人も多く、現世への執着も強く、恨みを残している霊(亡者)もいるでしょう。お盆の海には、楽しそうに泳いでいる海水浴客を海に引きずり込もうとしている、霊がたくさん集まっているとされているのです。

ご先祖様の霊に引きずり込まれるのは合点がいきませんが、亡者の話は納得できる部分が多いような気がします。しかし、冬山の事故や交通事故などで亡くなった人もたくさんいますので、お盆の海だけに特別に亡者の恨みが集まる、というのは少し不思議です。

 

 

お盆に海に入ってはいけない本当の理由

 

 

上記の話は、ご先祖様の霊であれ、亡者であれ、目に見えないものを利用してでも、お盆の海の危険性を伝えようとしているのではないでしょうか。前述したように、小さい頃から繰り返し、言い伝えを聞かされていると自然と体に刷り込まれます。

それだけお盆の海には危険が潜んでいるということになりますが、そこまでして伝えたいお盆の海の危険とはいったいどのようなものなのでしょうか。

 

土用波

 

お盆の頃には土用波という、普段の状態とは異なる波が発生することがあります。土用波とは、遠方の台風の影響で生じる波のことです。沖合いではあまり目立ちませんが、海水浴場などの沿岸では大波になることがあります。

地形や台風の勢いにもよりますが、通常の3倍くらいの大波になることもあります。突然の高波になることもあり、昔から漁師には恐れられていました。海水浴客が土用波に襲われることもありますが、独特のうねりもあり、危険な波です。

土用波が大潮と重なると、より大きな波となり、甚大な被害が発生するような場合もあります。実際に土用波で被害を受けた人々の話が、お盆の海では霊に足を引っ張られるという話に変化して、言い伝えになっていったのでないか、と考えられます。

 


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土用波の時期に子どもたちを海岸に近付かせない言い伝えとしては、相当なインパクトと効果が期待できるような話ではないでしょうか。

海岸で遊ぶ人

 

離岸流

 

お盆の時期に発生するとは限りませんが、足を海に引っ張られるという話から離岸流を想像することは難しくないでしょう。離岸流とは、海岸の波打ち際から沖合いに向かって流れる海流のことです。

離岸流の幅は約10mで、強い引き潮です。遠浅の海で発生しやすく、あっという間に沖合いにまで流されてしまうこともあります。海岸の地形にもよりますが、離岸流の影響で毎年多くの重大な事故が発生しています。

単なる波だと思っていると、大変な事態を引き起こす可能性もあります。お盆の時期は夏休みとも重なるので、多くの海水浴客が海を訪れます。この時期の海水浴で離岸流に巻き込まれることのないように、霊の言い伝えで人々に警鐘を鳴らしているのかもしれません。

離岸流に巻き込まれたらどうすればよいのでしょうか。まず冷静になり、決してパニックを起こさないようにすることが重要です。焦って流れに逆らって泳いでしまいがちですが、絶対に離岸流の流れと反対方向に泳いではいけません。

離岸流の流れは、秒速1mを超える早いものもあるので、簡単には離岸流の流れの反対方向に泳ぐことはできません。パニックを起こし、無理な方向に泳いでいると、最悪の場合には沖合いにまで流されて、大きな事故につながってしまうことも考えられます。

離岸流から脱出するには、海岸線に沿って、離岸流の流れに対して垂直(直角)に泳ぐことが必要です。前述したとおり、離岸流の幅は約10mなので、そこを渡り切ってしまえば、沖合いに流される引き潮の影響からは離脱することができます。

また、離岸流が発生しやすい場所には遊泳禁止の立て札が立っているところもあります。地元の情報を軽視することなく、危険な場所には近付かないことが大切です。

 


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お盆の海水浴シーズンの離岸流による事故を防止するために、霊に海に引っ張られるという言い伝えで注意を喚起しているのでしょう。

 

くらげ

 

8月のお盆の時期になるとクラゲが大量に発生する地域があります。クラゲに刺されたことがある人はわかると思いますが、痛みと痺れがひどく、憂鬱な気分となり、夏の海水浴は台無しになってしまいます。クラゲの種類によっては命に関わることもあります。

クラゲは普段は沖合いに漂っていますが、土用波の影響で海岸近くに移動することもあります。もしクラゲに刺されたら、薬を塗るなど早急に処置をした方が良いでしょう。クラゲに刺されないようにするために、お盆の頃に海に入るのをダメとしているのでしょう。
高波

 

水温の低下

 

お盆の頃になると、急に海水の温度が低下することがあります。急激な海水温度の低下は、筋肉の痙攣や心臓麻痺を引き起こす可能性があります。海に入っていて急に冷たく感じたら、早く海から上がって体を温めるようにしましょう。

海水浴の基本として、ずっと海に入りっぱなしなのは体が冷えるので止めましょう。できるだけ定期的に海から上がって、体を休めて体温を回復させる時間を確保するようにしましょう。