皆さんは朝食は和食派ですか?洋食派ですか?
朝食に限らず、食パンを食べる時はほとんどの方が何かしらで味つけをするでしょう。
ジャムやマーマレードなど甘みの強いものをつける方もいるでしょう。
バターやマーガリンなどをつける方もいますよね。
今回はその中でもマーガリンについてお話します。
バターとマーガリンがどう違うのか、マーガリンは身体にとってどういう影響を与えるのかもご紹介します。
マーガリンの成分や製法は?
マーガリンは、動物性油脂や植物性油脂を原料にして人工的にバターの風味に似せたものです。
別名、人造バターとも呼ばれています。
まずは油脂を精製し、透明の液体の油にします。
精製により、油はサラダ油のような透明の油になります。
ですが、液体の油はマーガリンとしては使いにくいです。
使いやすくするために、常温で固形になるようにする必要があります。
油に水素分子を添加することで、常温でも固形の脂ができます。
この固形状の白い脂のかたまりのものを、「ショートニング」といいます。
市販されているパンの材料や、お菓子作りなどに使われます。
どうみてもバターとは異なりますよね。
ですので、マーガリンはこのショートニングに様々なものを足していきます。
人間は、味を感じる際に味はもちろん、匂いや見た目に影響を受けます。
ショートニングに香料を添加し、バターのような香りを付けます。
そして、味やコクを付けるために塩や脱脂粉乳を混ぜます。
色も似せておいた方が脳でバターと勘違いしやすいため、着色料を加えてバターにに似た薄黄色にします。
もちろんメーカーによって作り方は異なるでしょうが、大まかな基本はこのような感じです。
日本ではJAS規格により、これらマーガリン類として製造されたものも2種類に分類しています。
油脂の含有率が80%以上のものをマーガリン、80%未満をファットスプレッドと分類し、名称欄に記載しています。
ファットスプレッドには、チョコレートやその他果実味など、別の風味をつけることも許されています。
バターとマーガリンの違い
では、バターとマーガリンは結局どこが違うのでしょうか。
まず、バターとマーガリンでは成分から異なります。
バターの原料は、言わずと知れた乳脂肪分ですね。
つまり、牛の乳が原料ですので「動物性油脂」ということになります。
一方で、マーガリンの主成分は「精製された油」です。
油であればなんでもよいのですが、主に植物性油脂が使われることが多いです。
大豆油やコーン油、菜種油、パーム油などが使用されています。
味や風味も異なります。
バターは乳脂肪分を使用して作るため、最初から甘みやコクがあります。
マーガリンはもともとが油ですので、甘みやコクといったものは添加物で補います。
冷蔵した時の固まり方も異なります。
バターは冷蔵すると固くなってしまいますので、パンに塗る際は少し常温にしておいた方が塗りやすいです。
マーガリンは水素の添加により、常温で固形になるように加工を施されていますが、冷蔵しても固まりにくく、冷蔵庫から出てすぐ塗って伸ばすことができます。
バターはいつから使われているかというのは定かではありません。
インドの経典によると紀元前2000年頃には、すでに現在のバターのようなものが作られていたという記録が残されています。
もともとは食用ではなく医薬品や化粧品として用いられていました。
食用として利用され始めたのは紀元前60年頃からといわれています。
一方でマーガリンは、フランスで1869年に生まれました。
プロシアと戦争のまっただ中、フランスではバターが欠乏しました。
ナポレオン3世がバターの代用品を募集し、メージュ・ムーリェという化学者が、牛脂に牛乳を混ぜたものを冷やし固め、できたものが始まりです。
乳脂肪と植物性脂肪はどう違う?
まず、脂肪とは脂肪酸3つとグリセロールが結合したものです。
脂肪酸とは炭化水素鎖と呼ばれるものに、カルボキシル基(COOH)が結合したものです。
炭化水素鎖は炭素(C)と水素(H)が結合したものです。
化学の授業などで習ったことのある方も多いでしょう。
炭素には結合できる手のようなものが4本、水素には1本あるので炭素1つに対し、水素は4つ結合することができます。
ですが、鎖となり他の炭化水素と結合するためには別の炭素と繋がるために手を1本開けておく必要があります。
また、カルボキシル基とも結合しなければならないので、そこにも手が必要ですね。
ちなみにカルボキシル基の構造は炭素、水素の他に酸素が結合したものです。
酸素の手は2本です。
カルボキシル基は、他と結合するため炭素の手を1本あけておきます。
残った3本のうち2本で酸素の1つと強く結合します(―C=O)。
残った1本で、酸素のうち1つと結合し、酸素の余った1本で水素と結合します(―C―O―H)。
また、脂肪酸のカルボキシル基でない側を炭化水素基といいますが、こちらもCの手を1本あけて残りの手にすべて水素がつきます(H3≡C―)。
脂肪酸のうちもっとも単純なものが酢酸と呼ばれるものです(CH3COOH)。
この図のうち、黒いものが炭素、赤いものが酸素、白いものが水素を表しています。
この炭化水素基を長くしていくことで別の脂肪酸へと変わります。
脂肪酸とグリセロールが結合し、脂肪と呼ばれるものになります。
この脂肪酸のうち、飽和脂肪酸が多いものが動物性脂肪、不飽和脂肪酸が多いものが植物性脂肪です。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸って?
飽和というのは、全てが埋まった状態を表します。
つまり、炭素同士が二重結合しておらず、それぞれが1本につき1つの水素と結合しているものが多い状態です。
反対に不飽和脂肪酸というのは、炭素同士が二重結合している場所が多く、まだ水素がくっつく余裕があるものを指します。
飽和脂肪酸は、融点が常温より高いため、普段は固形をしています。
一方で、不飽和脂肪酸は融点が常温より低いため、普段は液体です。
ですので、不飽和脂肪酸には人工的に水素を付加し、飽和脂肪酸に近づけます。
こうすることで、不飽和脂肪酸である植物性脂肪からできたマーガリンも常温で固体になるようになります。
マーガリンはなぜ危険なのか?バターは安全?
マーガリンが危険という話を聞いたことがある人も多いかと思います。
では、なぜ危険だと言われているかご存じですか?
次はマーガリンが危険だと言われる理由についてお話します。
トランス脂肪酸が多い
マーガリンはバターと違い、人工的に水素を付加しているためトランス脂肪酸というものが多くなります。
もちろんトランス脂肪酸というものは自然界にも存在するものです。
このトランス脂肪酸は炭素が二重結合している場所に関係します。
二重結合のうち、水素がどちら側に結合しているかでシス脂肪酸とトランス脂肪酸の2つに分かれます。
二重結合している炭素に結合している水素が同じ向きなのが「シス脂肪酸」、反対側になっているのが「トランス脂肪酸」です。
なぜトランス脂肪酸が悪いのか
トランス脂肪酸は、食品からとる必要がないと考えられています。
ですので、とりすぎた場合の健康への悪影響が注目されています。
たとえば、トランス脂肪酸を多く取り入れてしまうと、血液中にある脂質の一種である、悪玉コレステロールとも呼ばれるLDLコレステロールが増えます。
その一方で、善玉コレステロールと呼ばれるHDLコレステロールが減少することも報告されています。
つまり、日常的にトランス脂肪酸を摂取する機会が多い場合は、少ない場合と比べると心臓病などのリスクが高まることが示唆されています。
もちろん、このトランス脂肪酸を多く摂取することの健康への悪影響を示す研究の多くは、トランス脂肪酸をとる機会や量が多い欧米人を対象としています。
ですので、日本人における場合でも同じような悪影響があるのかどうかということはまだ明確かされていません。
同じトランス脂肪酸であっても、油脂の加熱や水素の添加でできるトランス脂肪酸と天然に存在しているトランス脂肪酸で、健康に及ぼす影響に違いがあるのかもまだわかっていません。
また、トランス脂肪酸にはたくさんの種類があり、どのトランス脂肪酸が健康に対して悪影響を及ぼすのかについても、十分な証拠が得られていません。
トランス脂肪酸をどのくらいに抑えたらいいの?
WHO(世界保健機関)とFAO(国際連合食糧農業機関)による合同専門家会合で、国際機関が生活習慣病の予防のための食事、栄養及び慢性疾患予防に関する専門家会合が開催されました。
その中で、食品からとる総脂質、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸等の目標値は2003年に公表されました。
トランス脂肪酸の摂取量は、総エネルギー摂取量の1%未満とするような勧告があります。
日本人が摂取するエネルギーは平均で1日あたり約1,900 kcalですので、1%未満となると1人1日当たり約2グラム未満に相当します。
農林水産省による、2005~2008年に実施した調査研究では、実際に日本人が食品から摂取しているトランス脂肪酸の1人1日当たりの平均的な量は、0.92~0.96gであると推定されました。
これは総エネルギー摂取量の0.44~0.47%に相当します。
また、食品安全委員会は、2012年3月に、食品に含まれるトランス脂肪酸の健康影響評価の結果を公表しました。
この評価によると、日本人のトランス脂肪酸の平均的な摂取量を、平均総エネルギー摂取量の約0.3%と推定しています。
日本人の多くはトランス脂肪酸の摂取量が総エネルギー摂取量の1%未満であり、健康への影響を評価できるレベルを下回っていることが結論づけられました。
つまり、通常の食生活を送っていれば、トランス脂肪酸の過剰摂取による悪影響は小さいということです。
マーガリン=プラスチック?
マーガリンのことを「食べるプラスチック」と聞いたことはありませんか。
ですが、これは日本人が陥りやすい勘違いでしかありません。
そもそもマーガリンがプラスチックと言われたのは英語の文献です。
つまり「plastic margarine」という言葉が出てくるのです。
日本人がプラスチックと聞くと、まずプラスチック樹脂を思い浮かべることが多いでしょう。
ですが、英語のplasticには形容詞的な使い方で、「可塑性のある」という意味があります。
この可塑性は、力を加えると簡単に変形し、その形を保つことができるという意味です。
マーガリンにしろ、バターにしろ外から力を加えることで形は変わりますよね。
ですので、マーガリンもバターもプラスチック、つまり可塑性があるということです。
バターにすれば安全?
バターは原材料が牛乳と塩です。
また、マーガリンなどの不飽和脂肪酸に比べて乳脂肪分は消化吸収などエネルギー効率がよく、体内で蓄積されにくいです。
他にもビタミンAや、ビタミンEが含まれているので栄養素も取り入れることができます。
ですが、安全とはいえバターは脂肪分と塩分です。
摂取のし過ぎには注意が必要です。
まとめ
マーガリンにはトランス脂肪酸が多く含まれています。
ですが、日本人の平均的摂取量は、安全基準として設けられている2gより少ないです。
つまり、平均的な食事を行っていればすぐさまマーガリンによる悪影響はないと考えられています。
バターはマーガリンと比べると、ビタミンなどのほかの栄養素も取り入れることができます。
しかしどちらにせよ、バターもマーガリンも油脂と塩分ですので摂取しすぎには気をつけましょう。