小麦も大麦もイネ科の植物で穀物として利用されています。三大穀物といえば、米、小麦、とうもろこし、を言いますが、大麦はこの3種類の次の4番目に多く栽培されている穀物です。

歴史的には、大麦の方が小麦よりも少し早く栽培されていたようで、約1万年前の旧石器時代には利用されていたようです。小麦と大麦はそれぞれどのような穀物か、詳しく解説します。
小麦畑

 

 

小麦と大麦の違いは


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小麦も大麦も主要な穀物として世界中で栽培されています。小麦と大麦それぞれの特徴を説明します。

 

小麦

 

小麦はイネ科コムギ属に属する植物です。種子を収穫して、その種子の中の胚乳を粉に挽いて小麦粉に加工します。小麦には、豊富にグルテンというタンパク質が含まれています。

小麦粉は、うどん、パン、ピザ生地、パスタ、ラーメンや焼きそばの麺、お菓子やスポンジケーキなどの原材料として利用されています。

また、胚乳だけでなく、表皮や胚芽などすべてを粉に挽いた全粒粉も、クッキーやシリアル、パン、などの原料として使用されるようになっています。

小麦は中央アジアが原産と言われており、メソポタミア地方で栽培されるようになったのが最初で、その後紀元前3000年頃にはヨーロッパやアフリカに伝来したそうです。

中国には、4000年前頃に伝来し、3000年前頃には広く栽培されるようになりました。その後日本に伝わり、2000年前の遺跡から小麦が発掘されています。

弥生時代には日本国内にも広まっていったものと考えられています。平安時代には貴重な穀物であるとの認識はあったために、限られた身分の人しか口にできないものでもありました。

その後、鎌倉時代に二毛作が始まると裏作の貴重な穀物として次第に栽培量も増加していきました。

しかし、当時はまだ製粉技術が発達していなかったために、小麦「粉」を使用した食品は贅沢だと考えられていました。

江戸時代になると、石臼で小麦を挽く技術が普及したことから、庶民にもうどんや饅頭を食べる習慣が広まり、小麦の生産は拡大していくことになります。

 

 

明治時代になると、欧米からパン食の文化が輸入されて、ますます小麦の生産は盛んになります。その後は、日本人の食生活の欧米化もあり、現在では海外からも安い小麦を輸入しています。

現在日本における小麦の自給利率は、平成28年度農林水産省のデータによると、38%と低く、輸入に頼っている状態です。

米の減反政策もあり、小麦の自給率が上向いた時期もあったのですが、安価な輸入品との競争も厳しくなっています。

 


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また、小麦には価格統制の制度が残っています。価格統制とは、食糧法という法律に定められているもので、国内小麦生産農家を保護する目的で政府が小麦の流通価格をコントロールする制度です。

以前は米を中心に強力な管理政策を行っていましたが、時代の流れと共に徐々に緩和されてきています。

最近は小麦に含まれているグルテンが身体に悪い影響を与えているという声が大きくなり、グルテンフリーを謳った食品が増えています。

実際にグルテンは、セリアック病という遺伝性免疫疾患を引き起こすことがあります。セリアック病は、下痢や栄養失調の症状を発病させます。

治療法は現在のところ確立されておらず、グルテンフリーの食材を食べることで症状の改善をすることが可能となっています。
パン

 

大麦

 

大麦はイネ科オオムギ属に属する植物です。種子を収穫し、その種子を発芽させて、主に麦芽として利用します。

小麦と異なり、大麦にはほとんどグルテンは含まれていません。調味料(醤油、味噌など)やビール・麦茶などの原料、麦飯の材料として、利用されています。

 

 

大麦は約1万年前にユーフラテス川の豊かな三日月地帯で栽培されていたものと考えられています。当時は大麦を粉にして粥状にしたものを食していたようです。

古代エジプトでは、既にビールや大麦パンの製法が確立していた記録が残っています。一方で、この頃の古代ローマでは既に小麦が主食になっていました。

大麦は主に家畜の飼料として利用されていました。このようにグルテンがないことから、大麦は次第に小麦に取って代わられるようになっていきます。

日本には3世紀頃に中国を経て伝わってきたようです。鎌倉時代以降になり、二毛作が広まると、寒冷地帯や乾燥地帯でも栽培することができる大麦は、米の裏作として、全国に拡大しました。

 


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小麦は製粉する必要がありますが、大麦にはその必要はありません。また、手間がかからなくて早く生育するので、小麦よりも育てやすいこともあり、栽培面積が拡大しました。

明治時代には、大麦の作付面積は小麦の約3倍にまで達していました。当時の大麦の主な用途は米と混ぜて麦飯にする、主食としての利用方法が、特に農村部では、一般的でした。

農村部では、白米への憧れが強く、次第に国民生活が都市化していくと、麦飯は貧しい生活の代名詞のような扱いを受けるようになり、次第に麦飯そのものがなくなっていきました。

しかし、その一方で兵士などの間で、白米ばかりを食べることによる脚気の蔓延(ビタミンBの不足)が大きな問題になっていきました。

その後は、米の収穫量の拡大を受けて、また、様々な用途に利用できる小麦の栽培が増えて、反比例するように大麦の栽培は年々減っていくことになります。

日本が高度経済成長期に入ると、経済的に見合わなくなった二毛作はほとんど行われなくなり、大麦の栽培は大きく減少しました。

大麦も、日本の主要な穀物の一つであったので、政府による統制下に置かれていました。現在でも、新食糧法が施行されても、大麦は政府の管理下にあります。

主食としての国内産大麦だけではなく、輸入されている飼料用大麦についても生産国から政府が買い取って業者へと売り渡す「政府操作飼料」とされています。

現在では、グルテンフリーの大麦がダイエットや健康食に効果があると言われており、大麦も大きく見直されています。

以前のように貧しい食生活などと言われることはなく、むしろ健康的で贅沢な食生活を送るための食材として認知されてきています。

小麦を食べることは悪で、大麦を食べることが善、という一昔前には考えられなかった状況となっていることは驚きです。
大麦


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小麦と大麦のアレルギー

 

 

小麦も大麦もアレルゲン(アレルギ―源となる物質)になる可能性はあるのですが、理由が少し違っています。

小麦ですが、小麦は、鶏卵、牛乳と並んで3大アレルゲンのひとつです。小麦によるアレルギーの原因物質は、小麦に含まれているるタンパク質が原因です。

このたんぱく質には、水に溶けない小麦グルテンと水に溶ける小麦アルブミンの2つに分けることができます。

小麦グルテンも、小麦アルブミンも、両方ともにアレルギーを引き起こす原因っとなっているのです。

一方で、大麦に対するアレルギーは、一般的には、小麦アレルギーに関して引き起こされます。

どういうことかと言うと、小麦アレルギーは、小麦だけに対してのみ反応するのではなくて、大麦など他の種類の麦にも反応を起こして、アレルギー担ってしまう場合があり得るのです。

この反応を「交差反応」と言います。

交差反応とは、本当は異なっている種類のタンパク質の構造であっても、構造が類似しているタンパク質に対してアレルギー反応を発生させてしまうことを言います。

一般的には、小麦と他の麦類の交差反応によるアレルギーが発生する確率は20%くらいと言われています。

したがって、小麦アレルギーを持つ人の5人に1人は大麦などの、小麦以外の麦類に対してもアレルギー反応を起こす可能性があるということになるのです。

つまり、アレルギーになる原因は、小麦と大麦では異なるのですが、小麦アレルギーの人の中には大麦にもアレルギーを起こしてしまうことがある、ということになります。