糸こんにゃくとしらたきの違いって、説明できますか。
糸こんにゃくもしらたきもおでんやすき焼きの具材に使われているような気がしますが、「この料理にはこちらを使う」というルールが決まっているものなのでしょうか。
糸こんにゃくとしらたきの違いを詳しく解説します。
糸こんにゃくとしらたきはどこが違う?
実は、現在では糸こんにゃくとしらたきには明確な差はなく、同じものと呼んで大きな問題はありません。
主に、関東ではしらたき、関西では糸こんにゃくと呼ばれています。しかし、元々は明確な違いがありました。
糸こんにゃく
糸こんにゃくもしらたきも原料はこんにゃく芋です。
こんにゃく芋をすり潰してペースト状にしたものや、乾燥させて粉状にしたものを水に溶かしたものに、成分を固めるための薬品(凝固材)を添加して、どちらも製造されます。
糸こんにゃくは、上記の固めたもの(板こんにゃく)を細長く切って糸のような形状にして食べていました。
中にはところてんのように型に入れて押し出すように製造するものもあります。どちらの製法でも角が残ってしっかりした食感になるものが多くなります。
太さは主に4mm~8mmくらいのものが多いようです。
糸こんにゃくは色が黒っぽくて、しらたきは色が白っぽい、と言われることがありますが、これは原料のこんにゃく芋(こんにゃく粉)の色の違いによるもので、糸こんにゃくとしらたきを区分する特徴にはなりません。
したがって、色の白い糸こんにゃくもありますし、逆に黒いしらたきも販売されています。
こんにゃくは、インド、またはインドシナ半島を原産地とするサトイモ科の多年草で、地下に伸びる茎が成長してこんにゃく芋になります。
地下茎の部分を食用にしますが、生のままではエグミが強く食用には適していません。食べるためには茹でるなどの加工が必要になります。
こんにゃくの主な成分は、「コンニャクマンナン」という多糖類で人間の体内ではほとんど消化されることのないものです。
この性質を利用してこんにゃくを使った食品はダイエットに効果があるとされ、多くのダイエット食品に使われています。
また、血糖値の上昇を抑える効果もあるため、健康食品の材料としても期待されています。
つまり、すき焼きなどの高カロリーの料理を食べる時に、糸こんにゃくのような低カロリーの食材を一緒に食べることは理にかなっているといえます。
カロリーの過剰摂取を抑えるとともに、糸こんにゃくでも満腹感を感じることができるので、打ってつけの食材です。
こんにゃくは、糸こんにゃくやしらたき以外にも、多くの料理で利用されている食材です。
こんにゃくそのものは淡白な味なので、味噌田楽などの調味料の味を楽しむような料理にも使われています。
一般的には、板こんにゃくを料理に使うことが多いと考えられますが、なかなか味が染み込みにくい素材でもあります。
一般的には、包丁で板こんにゃくを切って利用するのですが、あえて手でちぎることで断面をでこぼこにして味を染みやすくする工夫も用いられています。
こんにゃくはお腹を掃除してくれるとよく言われますが、便通にも効果があります。前述したコンニャクマンナンは食物繊維でもあります。
食物繊維が豊富なこんにゃくは、整腸作用にも優れており、胃腸の働きを健康にしてくれる効果もあるのです。
また、こんにゃくの味が淡白なので味噌田楽を、と説明しましたが、味噌とこんにゃくを一緒に食べることは栄養学的にも大きな意味があります。
現在ではヘルシーなダイエット食として認識されているこんにゃくですが、かつては食べるものがなくてこんにゃくしか食べるものがない、という時代や地域もありました。
そうなるとほとんど栄養のないこんにゃくだけを食べ続けることになり、栄養失調になってしまう可能性があります。
そこで栄養素の豊富な味噌と組み合わせることにより、体に取り込む栄養素のバランスを調整していた、と考えられるのです。
しらたき
次に、しらたきですが、しらたきは糸こんにゃくと製造方法が異なっています。
まだ固まっていないペースト状のこんにゃく芋(あるいは水で溶かしたこんにゃく粉)を、じょうろの穴のような部分から流し出して、70度くらいの温いお湯の中で固めておくとしらたきになります。
製造方法からわかるように、糸こんにゃくのような角ができることはなく、細い丸型の麺のような状態になります。
食感も、糸こんにゃくのように滑らかではなく、ざらざらとした食感のものが多くなります。太さは、糸こんにゃくよりも細いものが主流で、2mm~3mmくらいものが多いようです。
このように製造法の違いで、糸こんにゃくとしらたきは区別されていました。「いました」というのは、現在ではこのような区分が必ずしも当てはまらなくなっているからです。
糸こんにゃくをしらたきのように細い穴から成型することも一般的になってきており、関東と関西での単なる呼び名の違いのような状況になっています。
業界団体としては、一般財団法人日本こんにゃく協会、というものが存在していますが、糸こんにゃくとしらたきの定義を定めている、ということはありません。
これは、もしきちんとした定義を定めてしまうと、これまでに製造していた「糸こんにゃく」や「しらたき」の名称を変更しなければいけない事態が発生するかもしれず、この点を心配していると考えられます。
実際には、こんにゃくに関連する事業を営んでいる人々を応援する団体が、余計なコストを発生させたり、手間を増やすことは本意ではないでしょう。
つまり、同じこんにゃくから製造された食べ物を、関東ではしらたき、関西では糸こんにゃく、と呼ぶ、という認識で問題はないと考えられます。
それでは、すき焼きに使うのは、糸こんにゃくが正しいのか、しらたきが正しいのか、の答えですが、正解は「自分の好きな方を使う」です。
そもそもそんなに味が異なるものでもありませんし、太さや色で自分の好みの糸こんにゃくやしらたきを使っても全く問題はありません。
強いて言えば、関西風すき焼きの場合は糸こんにゃくを、関東風すき焼きの場合は、しらたきをそれぞれ使うことが、相性が良いのではないか、と考えられます。