冬になると雪道対策としてスタッドレスタイヤ(スタッドレス)やチェーンの準備をする人もいるのではないでしょうか。
スタッドレスとチェーンの特徴を説明して、併用の可否についても解説します。
スタッドレスとチェーンの違いは?
雪道はツルツルと滑りやすいために、滑り止めとして利用されているのがスタッドレスとチェーンです。それぞれの特徴について説明します。
スタッドレス
スタッドレスタイヤとは、タイヤの素材や溝のパターンなどで雪道でも滑りにくくしてる冬用タイヤのことです。
元々冬用のタイヤとしては、スパイクタイヤが主流でした。スパイクタイヤとは、タイヤの表面に鋲(スタッド)を埋め込み雪道に引っ掛かりやすくすることで、すべりにくくなるように加工されたタイヤです。
制動距離(自動車がブレーキを踏んでから止まるまでの距離)も短く、ドライバーには高く評価されていました。
ところがスパイクタイヤの鋲がアスファルトの路面を削り、道路を傷めていることが問題になりました。さらには道路を削ることで発生する粉塵も大きな社会問題でした。
1980年代になると、粉塵は健康被害にもつながるという懸念が全国的に高まっていきます。
そこで全国的にスパイクタイヤの使用は禁止されることになり、スパイクタイヤが販売されることはなくなっていきました。
条例などで、スパイクタイヤの使用禁止が定められましたが、地域を特定しているケースが多く、指定地域以外でのスパイクタイヤの使用は禁じられていません。
また、凍結しているような道路であれば使用可としているものもあります。しかし、全国的にスパイクタイヤの使用は激減することになりました。
スパイクタイヤに代わって登場したのがスタッドレスタイヤです。
以前から冬用のタイヤは存在していましたが、スパイクタイヤの方が性能が高かったことから、あまり注目されていませんでした。
そもそもタイヤの原料であるゴムは寒いところでは固くなる性質があります。したがって、雪道で固いゴムを利用して自動車を止める、ということは技術的には簡単なものではありませんでした。
しかし、技術革新として寒くても柔らかいままの状態を保つタイヤ用のゴムが開発されて、スパイクタイヤにも引けを取らないスタッドレスタイヤが登場するようになりました。
スタッドレス(タイヤ)は、チェーンのように脱着する必要がなく、タイヤにとって良い状態かどうかはともかく、夏の間も履きっぱなしで自動車を利用することができます。
スパイクタイヤに比べると環境にも優しく、チェーンのような手間も不要で、しかも年々制動能力が上がっているスタッドレスが、雪道対策の主役に躍り出るのには不思議はありませんでした。
チェーン
スタッドレスが年々進化しているのにも関わらず、チェーンを利用している人も存在しています。
前述したように、スタッドレスに比べると、着けたり外したりしなければならないので、チェーンは面倒な道具です。しかもタイヤのサイズに合わせて準備する必要があります。
しかし、チェーンにはスタッドレスよりも優れている点がいくつかあります。それは、雪道で車を止める力(制動力)です。
特に凍結しているような道路では、スタッドレスの効果もあまり発揮できない場合があります。
ましてやトラックやバスなどの大型車両には、高い制動力のあるチェーンの方が適している場合があります。
雪が降ると多くのバスがチェーンを履くのは、乗客の安全性を考えてのことなのです。
もう一つの利点は携帯性です。スタッドレスは持ち歩くにも保管するにも、それなりのスペースが必要になります。
もちろん履いたままでもスタッドレスは大丈夫ですが、雪道でない普通の道路で使用しているとスタッドレスの機能は経年劣化します。
長持ちさせるためには、冬以外のオフシーズンには直射日光の当たらない暗い場所などで保管しておくことが重要です。
スタッドレスに比べるとチェーンは車のトランクに積んでおくことができます。また、急に雪が降っても慌てる必要がありません。
急な降雪で、多くの車がスタッドレスに履き替えるためにガソリンスタンドなどに列をなしているのを見たことがありませんか。
チェーンの場合は、自分でタイヤに装着すれば良いので、上記のようなことはおきません。
ただし、チェーンを装着した経験がない人もいると思われますので、必ず練習をしておくようにしましょう。
チェーンには大きく分けると金属チェーンと非金属チェーンの2種類があります。
金属チェーンは昔からある鉄製の鎖状のチェーンです。丈夫で制動力が高いものですが、一方で重くて装着しにくいタイプでもあります。
また、自動車のボディに当たると傷付きやすく、高速で走ると切れやすい特徴もあります。
一方、非金属チェーンは樹脂などで作られたチェーンです。金属チェーンに比べると軽くて扱いやすい特徴があります。高速走行にも耐えうる製品もあります。
非金属チェーンは、金属チェーンよりは高価ですが、スタッドレスよりは安いものが一般的です。
その一方で、凍結した道路などでの安心感は、金属チェーンにはやや劣る印象があります。最近では非金属チェーンを装着する車が増えているようです。
併用はできるか?
スタッドレスタイヤにチェーンを装着することに意味はあるのでしょうか。
スタッドレスタイヤの効果にチェーンの効果が上乗せされるので、より強力な制動力が発揮できるのではないかと考えられます。
しかし、一方で、ノーマルタイヤにチェーンを装着した場合と大きく制動力が変わらないのであれば、スタッドレスとチェーンを併用する意味があまりないとも考えられます。
雪道の道路規制には、「冬用タイヤ規制(滑り止め装置規制)」と「全車両チェーン装着規制」の2種類があります。
冬用タイヤ規制(滑り止め装置規制)とは、この道を通行するためには、スタッドレスあるいはチェーンの装着が必要、というもので、どちらかの装備がないと通ることができないものです。
また、全車両チェーン装着規制とは、全ての自動車はチェーンの装備が必要で、チェーンを装備していない車両は通行ができないというものです。
つまり、全車両チェーン装着規制の場合には、スタッドレスを装着していたとしても、チェーンも装着する必要があるのです。
例えば、路面の凍結が著しく、スタッドレスでの走行でさえ危険な状態のような道路を運行するためには、スタッドレスもチェーンも、両方ともに履くことが求められます。
つまり、スタッドレスに比べるとチェーンの方が、強い制動力があるために、チェーンじゃなければ運転できない状態です、ということを全車両チェーン装着規制はアナウンスしているのです。
スタッドレスとチェーンの併用に関しては、併用を禁ずるルールはどこにもありません。
通常の雪道で併用していると過剰な装備だと思われるかもしれませんが、それは雪道を安全に運転したい人の希望に応じて併用すればよいと思われます。
しかし、ノーマルにチェーンを履くよりもスタッドレスにチェーンを履いた方が制動力は強くなりますし、上記のようにルールとしてチェーンを装着しなければならない場合もあるので、併用には全く問題はないものと考えられます。
そう考えると、スタッドレスを履いているとしても、天候は変わるものなので、スタッドレスを装着してさえいれば安心というわけにはいかないかもしれません。
運転中に、全車両チェーン装着規制へと状況が変わってしまう可能性もあります。そのためにも、スタッドレスを履いていても、チェーンの用意もしておくことが安全だと考えられます。