年末年始に食べ過ぎて疲れた胃腸を休ませるために、春の七草でお粥を作る七草粥は有名ですが、秋にも七草があります。

秋の時期に咲く花もたくさんありますが、秋の七草にはどのような由来があって、どのような草花があるのでしょうか。

日本の文化にしっかりと触れていきましょう。

 


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秋の七草の意味や由来は?

 

 

秋の七草は、日本最古の和歌集である万葉集に収められている山上憶良の和歌にちなんでいると言われています。

山上憶良は奈良時代の貴族で当時を代表する歌人の一人です。万葉集には78首が選ばれています。

貴族であるにもかかわらず、庶民の暮らしぶりなどを題材に社会批判を含んだ歌を詠んだことから、社会派歌人としても有名です。

 

秋の風景
秋の七草をテーマにした万葉集に収められた山上憶良の和歌は二首あります。

 

一首は、「秋の野に 咲きたる花を 指(および)折り かき数ふれば 七種の花」(万葉集・巻八 1537)です。

この歌の意味は、「秋の野原に咲いている花を指折り数えてみれば、7種類もの美しい花がある」、というものです。

そして、この歌の続きとして「萩の花 尾花 葛花 瞿麦(なでしこ)の花 姫部志(をみなへし) また藤袴 朝貌の花」(万葉集・巻八 1538)という一首があります。

二首目では、具体的な七草の名前をあげていて、これが秋の七草になったと言われています。

この和歌から秋の七草は、現在では「ハギ、ススキ、クズ、(カワラ)ナデシコ、オミナエシ、フジバカマ、キキョウ」の7種類とされています。

 


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ちなみに、二首目の朝貌(朝顔)が示す花には、アサガオ、ムクゲ、キキョウ、など諸説がありますが、現在ではキキョウが最も有力な説になっています。

また、二首目は旋頭歌(せどうか)という和歌の形式で詠まれている和歌です。旋頭歌とは、万葉集や古事記などで見られる奈良時代の和歌の型の一種です。

五七七を2回繰り返した6句から構成されており、頭の五七七を2回繰り返す(めぐらす(旋す))ことから旋頭歌と呼ぶそうです。

前述したように、春の七草の場合は七草粥のように食べても楽しめるものでしたが、秋の七草は鑑賞するだけで食べることはできません。

つまり、秋の七草粥、というものは存在しないのです。その代わり、秋の七草にはそれぞれ薬効があることが知られています。

昔から民間薬や漢方薬として利用されていますので、春の七草とは異なる観点で、多くの人に親しまれている草花と考えられます。

 

 

秋の七草の覚え方は?

 

 

秋の七草はどうすれば簡単に覚えることができるのでしょうか。いくつかの覚え方がありますが、最初に秋の七草の名前をリズムに乗せて覚える方法を紹介しましょう。

五七・五七、のリズムで覚えると身に付きやすくなります。

「ハギ・キキョウ クズ・フジバカマ オミナエシ オバナ・ナデシコ」の順で、五七・五七のリズムで口に出してみると覚えやすいのではないでしょうか。

次は語呂合わせを紹介しましょう。最初は、「おすきなふくは?(お好きな服は?)」で覚える方法です。

「お」はオミナエシ、「す」はススキ、「き」はキキョウ、「な」はナデシコ、「ふ」はフジバカマ、「く」はクズ、「は」はハギ、の頭文字です。

もう一つの語呂合わせは、「はすきーなおふくろ(ハスキーなお袋)」です。

「は」はハギ、「す」はススキ、「き」はキキョウ、「な」はナデシコ、「お」はオミナエシ、「ふ」はフジバカマ、「く」はクズ、の頭文字です。

こちらの語呂合わせは「ー」と「ろ」が余分ですが、文章自体が面白くてユニークなので忘れにくいかもしれません。

 

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画像写真を紹介

 

 

それでは画像と一緒に秋の七草を、花言葉を添えて、紹介します。

 

オミナエシ

 

オミナエシ
オミナエシは、「女郎花」と書く黄色の花をつける草花です。美しい花で、女性よりも美しい花と言われたためにこの名が付いたと言われているほどです。

オミナエシには、鎮静や抗菌などの作用がありますので、腹痛や下痢などにも用いられます。

ただし、オミナエシに含まれているサポニンという成分には溶血作用があるので、使い過ぎないように気をつけましょう。

オミナエシの花言葉は、美人、はかない恋、約束を守る、などです。

 

ススキ

 

ススキ
ススキは別名「尾花」とも呼ばれていて、動物の尾のような形状をしていることからその名が付いたと言われています。

また、「萱」(かや)とも呼ばれており、昔はススキの茎(萱)を屋根の材料にして茅葺屋根を作っていました。

お月見の際には飾られるススキですが、これは実った稲穂に似ていることから稲の代用品として使われるようになったからです。

お月見の時期(十五夜)にはまだ稲は実っていないので、ススキを飾って豊作を祈ったそうです。

残念ながら、ススキには薬効はありません。ススキの花言葉は、生命力、悔いのない青春、通じる心、などです。

 

キキョウ

 

キキョウ
キキョウは秋を代表する青紫で星の形をした花を咲かせる可愛らしい草花です。家紋にも良く使われる花ですが、明智氏の桔梗紋は有名です。

キキョウは薬効が高く、オミナエシと同様にサポニンが含まれています。咳を鎮める効果や、血圧を下げる効果があります。

特にキキョウの根を乾燥させたものは、昔から漢方薬などにも使われています。絶滅危惧種に指定されている花でもあります。

花言葉は、誠実、従順、変わらない愛、などです。

ナデシコ

ナデシコ
ナデシコは淡紅色の花を咲かせる植物で、カワラナデシコとも呼ばれます。

日本女性らしい奥ゆかしくて清楚な美しさを大和撫子(やまとなでしこ)と言いますが、カワラナデシコの別名が大和撫子です。

平安時代の女流作家である清少納言は「枕草子」の中で、ナデシコの美しさを取り上げています。

ナデシコには、炎症を抑えたり利尿を促したりする効果がありますが、流産の危険があるので妊婦は服用してはいけません。

ナデシコの花言葉は、純愛、思慕、貞節、いつも愛して、などです。

 

フジバカマ

 

フジバカマ
フジバカマは薄い赤紫色の花をつける植物で、昔から日本人に愛されていた花ですが、現在では絶滅危惧種になっており、野生のフジバカマはほとんど見ることはできません。

花屋で売られている「フジバカマ」は、純国産(本種)のフジバカマではなく海外産のフジバカマであったり亜種と交配させたもの(雑種)が大部分です。

 


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花の弁の形状が袴に似ていることから、この名前が付いたと言われています。フジバカマの花は匂いがしませんが、茎や葉は乾燥させると良い香りがします。

香水などに使われます。フジバカマのエキスには血糖値を下げたり、利尿を促す効果があることがわかっています。

フジバカマの花言葉は、躊躇、思いやり、優しい思い出、などです。

 

クズ

 

クズ
クズは「葛」と書き、昔から葛湯や葛切り、葛餅など日本人には馴染みの深い植物です。白い花を咲かせますが、黄色い花を咲かせる種類もあります。

クズは10メートル以上のツルを地上に伸ばし、表面には細かい毛が生えています。根は長芋やレンコンのように塊根を作ります。

 

 

この塊根をすって乾燥させた葛粉を使って葛餅などを作るのです。クズの根には、熱冷ましや汗をかかないようにする効果があり、風邪薬や首や肩の凝りに使われます。

クズの根を乾燥させたものを漢方では生薬の「葛根」と呼びます。世間によく知られている葛根湯という名称の漢方薬には、このクズの根の薬効を含んでいるという意味があります。

一方で、クズの花(葛花、かっか)には眩暈を防ぐ効果があると言われています。クズの花言葉は、治療、根気、芯の強さ、恋のため息などです。

 

ハギ

 

クズ
ハギは「おはぎ」の語源ともいわれ、秋を代表する赤紫の花を咲かせる植物です。女性のめまいやのぼせなどに効果があると言われています。

花言葉は、内気、前向きな恋、柔軟な精神、などです。