現在のように冷蔵・冷凍保存技術が発達していないときから、フルーツを長持ちさせる手段としてドライフルーツにするという方法がとられてきました。
ドライフルーツとは、読んで字のごとく乾燥させた(ドライ)果物(フルーツ)のことを指します。
では、フルーツはドライフルーツにすることによって長期保存することができるほかに何か違いがあるのでしょうか。
今回の記事では、ドライフルーツ全般に言える生のフルーツとの違いと、いくつかの種類のドライフルーツの栄養価や成分の違いをご紹介します。
ドライフルーツと普通のフルーツはどこが違う?
では、まずドライフルーツにすることによる変化についてご紹介します。
ドライフルーツは、乾燥させる手段が天日干しや砂糖漬けによる脱水などがあります。
基本的にはフルーツの中に含まれる水分量を20%以下にすることにより作られます。
甘さが増す
ドライフルーツは、生のままのフルーツに比べると甘さが強くなる傾向にあります。
その理由は大きく分けて2つに分かれます。
1つ目は、砂糖漬けによる人工的な甘さの付加によるものです。
例えば、お漬物などは大量の塩を使って作りますよね。
これは、野菜などに含まれる水分を塩が吸収し、食物を腐敗させる菌が生存・増殖するために必要な水分を奪い、衛生的に長期間保存するという原理で行われています。
砂糖にも同じような効果があります。
食品に含まれる砂糖の濃度が60%から65%程度あると、腐敗菌に必要な水分を砂糖が奪います。
そのため、長期保存が可能になります。
もちろん大量の砂糖が使われていますので、食べたときに砂糖の甘さを感じるというわけですね。
2つ目は成分の変性による自然な甘さの付加によるものです。
正確に言えば甘さが増すというのもありますが、渋さを感じさせる成分が変性するというのが強いのではないでしょうか。
例えばドライフルーツにすることにより甘くなる代表のフルーツと言えば柿があります。
干し柿を作るときは、基本的には渋柿で作ります。
渋柿はそのまま食べてしまうと、カキタンニンやシブオールと呼ばれる水溶性の成分が強く出てしまいます。
口の中は唾液で水分がある状態ですので、そのまま食べてしまうと渋み成分が唾液の中に溶け出し、渋さや苦さなどを強く感じます。
ですが、乾燥させることによりこれらの水溶性の成分が不溶性の成分へと変性します。
そのため、口内で渋みが溶け出さずに甘さだけを感じるというものです。
栄養価が増す
これは考えてみれば当然のことかもしれません。
ドライフルーツにすることにより、フルーツの中の水分が抜けます。
ですので、同じ100gあたりでしたら甘さはもちろん、栄養価も凝縮されています。
そのため、同等量食べたときにエネルギーはもちろん、ミネラルなどの栄養価も多く摂取することができます。
ドライフルーツの効能
では、具体的なフルーツを挙げ、効能の違いをご紹介しましょう。
パイナップル
生のままのパイナップルには、ブロメラインという酵素が含まれています。
この酵素にはたんぱく質を分解させる働きがあります。
ですが、このブロメラインは熱に弱く、60℃以上になると効果を失います。
パイナップルをドライフルーツにする際は加熱処理をすることが多いため、ブロメラインの効果が失われています。
また、ビタミンCも熱により失われますが、その分カルシウムなどのミネラルが多く含まれます。
ですので、パイナップルのドライフルーツには骨粗鬆症予防やイラつき、ストレスの軽減、免疫力の向上効果があります。
あんず
あんずは乾燥させることにより、βカロテン、食物繊維、カリウム、鉄の含有量が大きく増加します。
βカロテンは他のフルーツに比べても多く、抗酸化作用が強いためアンチエイジングや冷え性などの改善によいとされています。
食物繊維には便秘予防はもちろん、心筋梗塞などの生活習慣病予防に役立ちます。
カリウムにはナトリウムを排出させる効果がありますので、血圧上昇の抑制効果があります。
鉄分には活性酸素の分解によるアンチエイジング、貧血予防の効果があります。
いちじく
食物繊維が増加しますので、便秘の改善や肌トラブルの改善効果があります。
カリウムにより、血圧上昇の抑制効果が得られ、またむくみの改善もみられます。
鉄分により、貧血予防・アンチエイジングの効果があります。
エストロゲンという女性ホルモンと同じ働きをする成分がありますので、更年期障害の軽減、不妊症に効果があるとされています。
ザクロエラグ酸が含まれており、メラニン色素を抑えシミ・そばかすの抑制効果があります。
マンゴー
ビタミンAにより、皮膚組織などの健康維持、視力の維持に役立ちます。
βカロテンにより、アンチエイジング効果があり、がん予防にも役立つと言われています。
ビタミンEにより、肌トラブルの改善効果が期待され、シミやシワの予防に役立ちます。
葉酸の含有量が増えるため、皮膚細胞の働きを促進させます。
また、胎児の正常な発育、神経管閉鎖障害の予防に役立つため、妊娠を望む女性、妊娠中の女性には特に摂取してほしいフルーツです。
ばなな
ばななは乾燥させることにより、食物繊維、ビタミンB群、ポリフェノールが格段に増加します。
ビタミンB群には肌を健康に保つ効果や、成長促進効果、貧血予防効果があります。
また、食物繊維も増えていますので便秘の改善に役立ちます。
ポリフェノールにより、抗酸化作用がありますの、アンチエイジングにももってこいです。
ドライばななが苦手な方は、ばななチップスにしてもよいでしょう。
また、ドライフルーツにすることによりもち運びにも便利ですよ。
レーズン
干しブドウとも呼ばれるレーズンは、最も歴史の長いドライフルーツのひとつです。
貧血予防に役立つ鉄分、血圧の上昇を抑えむくみを防止するカリウム、骨粗鬆症の予防効果のあるカルシウムやマグネシウムが多く含まれています。
他にも銅性貧血を防止する銅や、味覚を正常に保つための亜鉛などのミネラルがバランスよく含まれているため、ミネラルの宝庫とも呼ばれています。
また、レーズンの糖は、効率的かつ素早くエネルギーに変換される特徴があります。
ですので、長時間の運動時や疲労時のエネルギー補給にもってこいです。
クランベリー
あまり日本ではメジャーなフルーツではありませんでしたが、ドライクランベリーの効果は注目を浴びています。
代表成分ともいえるプロアントシアニジンは、ビタミンCよりも高い抗酸化作用を持ちます。
また、研究により、膀胱炎や尿路感染症などの感染症予防にも効果的だと発表されています。
事実、アメリカなどでは膀胱炎の治療薬としてクランベリーの粉末が販売されています。
口腔内の菌に対しても効果があるため、虫歯や歯周病予防にも役立ちます。
もちろん健康面だけでなく、ビタミン群のおかげで美容にもよいとされています。
りんご
ドライフルーツにしたリンゴの大きな特徴は、そのビタミンCが失われにくいという点です。
ドライフルーツの中には、特に南国果実のものはドライフルーツにすることによりビタミンCを失いやすいものがあります。
ですが、りんごはドライフルーツにすることにより生のままに比べ、約50倍ものビタミンCを含んでいます。
そのため、免疫の強化作用やアンチエイジング効果が十分に得られます。
またカリウムによりデトックス効果、りんごポリフェノールにより内臓脂肪を減らす効果が期待されていますので、ダイエットにも向いています。
オレンジ
オレンジは生のまま食べるときは皮を捨ててしまうことが多いですが、ドライフルーツにすることにより、皮も食べることができます。
残念ながらビタミンCのほとんどが失われていますが、製法によっては保ったままドライフルーツにすることもできます。
反対にカリウムは多く含まれていますので、むくみの解消や血圧上昇の抑制に役立ちます。
また、ペクチンも豊富に含まれていますので、コレステロール値を低下させてくれます。
ペクチンは食物繊維ですので、便秘改善にも役立ちます。
まとめ
フルーツはドライフルーツにすることにより、栄養素が濃縮され、生のままに比べより強い効果を得ることができます。
残念ながら、熱に弱いビタミンCなどは失われてしまうものが多いですが、製法や種類によっては生のままと同じかそれ以上含まれるものもあります。
もちろん、水分が抜けていますので、生のままと同量食べてしまうとカロリーオーバーとなることがありますので、食べすぎには注意が必要です。
1日の摂取量を守り、毎日少量ずつ摂取することで健康を維持したいですね。