引っ越しをすると、どうやって知ったのか、ピンポンとNHKの集金人は新居にやってきます。
NHKを楽しんで視聴している人にとっては、受信料を払うことには抵抗はないかもしれませんが、民放しか見ない人にとってはNHKの受信料を払うことに釈然としない思いを持っている人もいるかもしれません。
そもそもNHKの受信料には支払いの義務があるのでしょうか。
NHKの受信料の支払い義務はある?
NHKの受信料に関しては放送法の第64条に規定があり
「テレビを設置していればNHKと契約しなければならない」
と定められています。
これはテレビ(放送受信機器)を持っている場合にはNHKとの契約義務があるとするもので、ワンセグ機能のあるスマホや携帯電話も対象となります。
NHKと契約をすれば受信料の支払い義務が生じることになるので、この場合には受信料を支払わなければいけません。
NHKの受信料は、月額で1,310円、BS/CS付きであれば月額で2,280円という金額になっています(2018年7月時点)。
2017年度末(平成29年度末)時点でのNHKの世帯契約率 は81%で、世帯支払率は80%となっています。およそ8割の国民がNHKと契約をして受信料を払っていることになります。
日本人は国民性なのか、官営放送に対する信頼が厚く、自然災害などの情報が適時適切に入手できるからと、多くの人がおとなしくNHKと契約をして受信料を支払っていますが、テレビを見る暇もないくらい忙しい人はいますし、NHKだけは絶対に見ない、という人もいるかもしれません。
本来は民法上の契約は自由意志に基づくものが原則であるためか、放送法の第65条に反してNHKと契約を結ばなくても罰則規定はないのです。
NHKから委託を受けた業者の人がNHKの受信料を払うことは国民の義務なので、払わないと捕まります、と言っているのは間違っています。
まず、テレビを持っているのであればNHKとの契約の義務があることは放送法に定められているので、これは嘘ではありません。
しかし、テレビを持っているかどうかを調査する権利はNHKにも委託を受けた集金人にもりません。
あくまで自己申告に頼るしかないのです。しかし、特殊な事情があれば受信料の全額免除や半額免除が認められる場合があります。
学校や福祉施設に関しては受信料が全額免除になる規定があります。また、自然災害NHKの被災者に対しても全額免除になっています。
障がい者の人に対しては、一定の条件をクリアしている場合には受信料の半額が免除されることになっています。
ここでもう一度放送法の規定を思い出してください。放送法第65条では、テレビを持っている人はNHKと契約しなければいけない、としているけれども罰則規定はない、と説明しました。
では契約をしても払わなくてもよいか、というとそんなことはありません。従来の裁判ではNHKの受信料を払わなかった人がNHKに訴えられて裁判で負けることがありました。
放送法では「支払い義務がある」とは明記されていません(NHKの規則では支払い義務がある、とされてはいます)。
しかし、もし契約をしてしまえば支払い義務は生じてしまいます。これまでの裁判でも、NHKと契約を結んだのにもかかわらず受信料の支払いを拒否していたために裁判で負けてしまったのです。
上手な断り方は?
NHKの契約を求められて委託を受けた業者の人が自宅に訪問してきた場合はどう断ればよいのでしょうか。
基本的には、家にテレビがある人はNHKと契約をするべきだとは思いますが、個人の思想信条としてNHKとは契約をしないという人もいるかもしれません。
契約を上手に断る方法について紹介します。まずは、家にテレビがないと主張することです。
放送法にもある通り、テレビがない人はNHKと契約する必要がありません。しつこい人は部屋の中を見せてください、と言うかもしれませんが、見せる義務はありません。
無理やり部屋に入ろうとしたら、不法侵入で警察を呼ぶと言って断固断ることが可能です。
NHKから委託を受けた業者は契約件数に応じて報酬を受け取ることになっている場合が多いので、何とかして契約を取ろうと脅したりすかしたりすることが考えられますが、契約する気がない時には毅然とした態度で断ることが重要です。
例えば、NHKと直接契約をしたいので電話してみます、と訪問した人には帰るよう促す方法もあります。
実際にNHKからの訪問員を騙って受信料を詐取するような犯罪も起こっていますので、効果はあるようです。
他には、自宅に訪問されても出ない、というシンプルな居留守も効果があります。しかし、訪問員もしつこく、訪問の時間帯を変えたりして何度も来るかもしれません。
こうなると我慢比べになってしまうかもしれませんね。
最悪の場合裁判まで発展することはありうる?
前述の通り、NHKの受信料に関する裁判は契約があるにもかかわらず受信料を払っていない人に対するものばかりでした。
しかし昨年(2017年)の12月に今までとは様相の異なる判決が出ました。それはNHKとの受信契約を拒否していた人に対するNHKからの請求を認めるものでした。
状況としては、テレビを持っていることは認めているが、受信契約を締結することを拒否している人に対して支払うべき義務があるとするものです。
これまでは、NHKとの契約がある人には受信料支払い義務がある、ということから、テレビを持っている人は受信料支払い義務がある、という解釈に変わったということです。
これまでNHKは見ていないから支払いません、契約しません、といって断ってきた人もいるかもしれませんが、この断り方はテレビを持っていますと言っているのと同じなので、支払い義務があるとされてしまう可能性が高いのです。
法解釈的には、テレビを持っているということが判明した時点で受信契約を結んでいるとみなされるので、受信料の支払い義務が生じるということのようです。
実際には裁判に持ち込まれるまでNHKからは再三契約のお願いをしてきたのにもかかわらず応じてもらえなかったということで提訴に至ったようなので、NHKの受信料をはらわないからといってすぐに裁判になるようなことは考えにくいでしょう。
繰り返しになりますが、基本的にはテレビを持っているのであれば、NHKの受信料を払って安心してテレビを楽しむ方が、遥かに精神衛生的にも健全であると言えるでしょう。